昔、遠い国の山奥に恐ろしい巨人が住んでいた。
3メートルの巨体にもじゃもじゃの赤毛と赤い髭、そして手には大きな斧。
その姿で、毎年、同じ日の同じ時刻に、ふもとの町の城壁の外に立ち、叫ぶのだった。
「おい、おまえたちの中で一番の勇者を連れてこい。そいつと戦ってやるから。さもないと城壁を壊して、斧で皆殺しにしてしまうぞ。」
そこで、毎年、城壁の門がおそるおそる開かれ、ひとりの哀れな勇士が歩み出て、敵と来たるべき死に立ち向かっていった。
そして、まるで巨人に魅入られたかのように、剣を抜くことすらなく立ちつくし、その大きなこぶしで叩き潰され、斧でこなごなに砕かれてしまうのだった。
ある日、この町にひとりの若い王子がたどり着いた。
「この町の人はどうしてみな、おどおどと悲しげな顔をしているのだ?」
王子はそばにいる旅人に尋ねた。
旅人は言った。
「あなたはまだ巨人を見たことがないのですね。」
「巨人だと?」若い王子は興味をそそられた。
旅人は王子に巨人の話をした。
「ちょうど今日が、毎年巨人がやってくるその日です。」
やがて日が暮れて、いつものように巨人が現れた。
「おい、町一番の勇者を連れてこい。戦ってやるから」巨人が叫んだ。
「ここにいるぞ」待っていたのは、若い王子だった。
彼は門をさっと開くと、勇敢にも一歩踏み出すと、巨人を見上げた。
ところが、巨人からはまだずいぶん離れていたにもかかわらず、そのあまりの大きさに、王子はたちまち打ちのめされてしまった。
しかし、このまま立ち尽くしても結果は見えている。
王子は、ありったけの勇気をふりしぼると、巨人のほうへ歩き出した。
剣を構え、その恐ろしい形相から決して目をそむけずに。
突然、王子は気づいた。
歩み寄るほどに、巨人が大きく見えてくるのではなく、逆に小さく見えてくるのだ。
見えてくるのではない。
実際に縮んでいくのだ。
王子がいったん立ち止まって巨人をにらみつけたとき、巨人の背丈は1.5メートルになっていた。
さらに近寄ってにらみつけた。
いまや巨人の背丈はたった60センチしかなかった。
そうして王子の剣が届くほどに近づいたときには、巨人の背丈はたったの30センチになっていた。
王子は剣をとると、巨人の心臓を貫いた。
そして地面に伏し死にゆく巨人のそばに屈み込み、尋ねた。
「おまえは誰だ?」
最後の息を引き取りながら、巨人は答えた。
「私の名は恐怖です。」
恐怖心をなくす方法は、ただひとつ。
行動することだ。
プールの飛び込み台で飛び込もうか飛び込むまいか迷っているときは足は震えても、飛び込んでしまえば、恐怖はない。
それどころか、それが快感であることに気づく。
行動を起こせば、恐怖は消える。
行動している人に、恐怖はない。
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