2012年1月9日月曜日

企業戦略にも使える本★失敗の本質―日本軍の組織論的研究

敗因研究ではなく組織分析の書として秀逸!

この本が単行本として最初に世に出たのは1984年。

しかも分析に当たって底本としたのが更に昔の戦史叢書(1966-80年刊)。

その後発表された膨大な戦史研究をふまえて本書を読めば、個々の事例分析はツッコミどころ満載である。

しかし、この本は長い間に渡り、いかなる戦史書よりも売れている。

なぜか?

それは、本書が敗因研究ではなく、組織分析の本として秀逸だからである(本の副題は「日本軍の組織論的研究」であり、決して「日本軍こうすれば勝てた」ではない)。

従って本書の肝は最後の第三章にある。

読み物として面白いのは間違いなく第一章だが、極論すれば、戦史に詳しい人であれば第一章を読む必要はない。

日本軍という組織の特性を、すべて日米の国力差に起因するものと安易に結論づけることなく、日本独自文化論でお茶を濁すこともなく、論理的にねばり強く結論まで導いており、この第三章は玩味熟読する価値がある。



とても読み応えのある内容でした。
 
また、本書の内容は会社経営にも非常に参考になる点が多いと思いました。
 
前半で6つの戦闘の経緯を詳述し、後半で6つの戦闘から帰納的に導かれる日本軍の特質を米国軍と対比することで分析しています。

 
読み応えについては、単に後半で、使っている単語・文章が比較的難しい(創造的破壊、下位の組織単位の自立的な環境適応、など)ということもあるかもしれません。

しかし、文脈で捉えれば容易に理解でき、また前半の各戦闘の説明が非常に詳細な具体例として挙げられていることで、抽象的な言い回しも十分に理解でき、かつ、抽象的にも思える文章に説得力が増します。
 
各戦闘の敗退の理由にはもちろん、物量に乏しいというのと技術的に立ち遅れていたという日本軍の特色もありますが、本書を読むとそれだけではなく、日本の戦略策定における原則的な考え方や組織上の問題点などが一番の問題だったと言うことがわかります。
 
さらに言うと、なぜ技術的に立ち遅れていたのかということもその根本的思想に原因があったことがわかり、今までの私の表面的な日本軍像がちょっと変化しました。

これは、会社経営に大いに通じることがあり、非常に多くの示唆に富んだ内容でした。

あなたの会社は、旧日本軍になってませんか?

正直、お勧めです。


端的に太平洋戦争における日本軍の失敗の本質を述べると「組織としての日本軍が、環境の変化に合わせて自らの戦略や組織を主体的に変革することができなかった」ということになると考える。

渡部昇一氏が日本人の気質を“和を最も重視する村社会の思想”として描いていることと同様に「戦略的合理性以上に、組織内の融和と調和を重視し、その維持に多大のエネルギーと時間を投入せざるを得なかった。

このため、組織としての自己革新能力を持つことができなかった」のだ。

日露戦争に勝利した結果、過去の成功へ過剰適応し、適応能力を締め出してしまった。

同様の事象が産業においても生じていることは、著名なところではクリステンセンの「イノベーションのジレンマ」、また非常に優れたケーススタディ集として山田英夫氏の「新版 逆転の競争戦略」からも読み取ることができる。


ビジネススクールの教科書で人的資源管理や組織行動論を学ぶことも大切だと思う。

しかし、この本のように過去の日本の歴史から現代にいたる不滅の教訓を学ぶことの方が、私にとっては合理的である。

今後もこの姿勢を維持していきたいと思う。


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