受験の役には立たなかったし、何かを教わったんだということにさえ、若いうちは気づかなかった。
オトナになってからわかった…
画家になる夢に破れた美術教師、ニール・ヤングを教えてくれた物理の先生、怖いけど本当は優しい保健室のおばちゃん。
教師と教え子との、懐かしく、ちょっと寂しく、決して失われない物語。
時が流れること、生きていくことの切なさを、やさしく包みこむ全六篇。
教師と生徒の関係を描いた短編集。
教師って完璧ではない。
聖人君子でもないし、神様でもない。
この作品に出てくる教師はどれもいい意味でも悪い意味でも 一人の人間である。
責めることは出来ないけれど、 もう少しどうにかならないものか・・・と思う教師もいる。
でも、振り返ったときに生徒と生徒の関係はどれも悪い思い出として残っていない。
もちろん現実ではそういうことばかりではないけれど、自分の経験を振り返ってみても生徒のときはすごく嫌いだった先生でも今思い出すとなぜか許してしまえたりしている。
月日はいろんな意味で寛容なんだな。
この本の中で一番心に残ったフレーズ。
「センセ、オトナにはなして先生がおらんのでしょう。
先生なしで生きていかんといけんのをオトナいうんでしょうか」
忌野清志郎が『RCサクセション』時代に歌っていた『僕の好きな先生』を小説にしたようなものです。
大事件も起こらないし、ヒーローもヒロインもいないけれど、「いい話しだな・・・・」と思える心暖まる短編集。
学校の先生って、実は人生を左右するほどの存在だけど、給料は驚くほど安いよな。(僕は教師じゃないけれど)。
幼稚園や小学校の低学年ほど、「いい先生」が必要なので、もっと給料を上げて欲しい、と、これは本書には関係の無い話し。
『気をつけ、礼。』・・・・・先生のいない「オトナ」にお勧めの一冊。
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